Salsa con Sabor,Sentimiento y Ritmo #10 一部で異常な信仰者を生んだといわれた

一部で異常な信仰者を生んだといわれる、サルサ・フィーバー 
フリオ・グンダ・メルセーは、ロベルト・ロエーナ(コルティーホ出身!)のアポロ・サウンドではトロンボーン&アレンジャーとして活躍していました。気になる曲のアレンジは彼が手掛けています。特に、7枚目から顕著ですが、プレーナが急にサンバになりサルサに戻る途中でのけぞる様なギターが挿入されてしまう等、1曲の中でリズムが急展開したりもします。普通の人なら思わず避けてしまいそうな過激さですが、おそらくサミー・ゴンザレス、パポ・サンチェスのプエルトリコでしかない歌唱にもよると思いますが、そこにはそれとなくプエルトリコのあの感じが忍んでいるのが感じられました。

さらなる美学を求めてアポロ・サウンドを独立して結成したのが、一部で異常な信仰者を生んだといわれる「サルサ・フィーバー」なんです。特に、2枚目の『GENTE DE PUEBLO』 はプエルトリコの人々の暮らしもコラージュされたジャケットも美しく、昨夜の愛のぬくもりがまだ残る二人の夜明けに聴きたい1枚として、私の最も重要なアルバムのひとつとして心にきざみ込んであります。空が次第に青みを帯びていく先に、幸せな朝が訪れるか不安な時、プエルトリコの湿った熱気に震えてみたいのです。

その後、あまりにもある意味では過激な存在の為か、メジャー・シーンからは退いていたようですが、88年頃にはソノトーン・レーベルのミュージカル・ディレクター兼アレンジャーとして復帰しました。元コンフント・チャネイの歌手、ウイリー・ゴンザレスのソロにそのクレジットを見つけた時に、思わずうれしくなりました。

時は、まさに、サルサ・エロチカ全盛期。目元を伏せた女性の耳もとに左手を差込み、ぐいと引き寄せ、いまにもキスしようとしている。オルケストラの名前が「官能の夜」。裏を返すと、美しい夜景のもとワインを傾けながらの食事。丁寧にもホテルのクレジットまであります。いやはや、真面目な音楽ファンからは、白い眼で見られてしまいそうなジャケットです。ここでは、往年の屈折したかのようなプエルトリコ・サボールは影をひそめ、センティミエント重視の内容で、それも時代の流れと納得してしまいました。

ところが、人間、やはり使命というのがあるようで、ややもするとただれたロマンチカばかりではいけないと考え(..と、思うのですが)、89年頃からミュージック・プロダクションズ・レーベルのプロデューサー兼ミュージカル・ディレクター(アレンジはたまにしかやらない)となりました。とにかくこの「MP」印のサルサには駄作が無いと断言出来る程に入れ込んでいます。ティト・ロハス、アンソニー・クルース、ティト・ゴメス、ペドロ・アロージョ、ルイシート・カリオーン等など、気合いの入ったアルバムばかりです。一方、傍系の「NRT」ではウイリー・ロサーリオ、プリミ・クルース、オルケスタ・ムレンセの、よりバイラなサウンドが見事です。

今日、傘下のメンバーが勢揃いした『MUSICAL PRODUCTION ALL STARS』を改めて聴いてみましたが、”MEDLET RITOMS TROPICALES”は、マンボ、ブーガル、チャランガそしてボンバ、プレーナの名曲をメドレーにしています。なによりも、コルティーホの “A BAILAR MI BOMBA” をラストにもってくるなんて、ちょっと憎い配慮だ。MP〜NRT印のサウンドは、サルサ・エロチカの時代をくぐり抜けた、今のサルサならではの、歌手を引き立たせた理にかなったサウンドとなり、とても魅力です。しかも、ぎりぎりのところで情緒に流されない、いさぎよさすらも感じられるディレクション。例の「トリアングロ」のバランスがすばらしいのです。

プエルトリコの熱気、それは湿った熱気と教えてくれたフリオ・グンダ・メルセーですが、今はその思いをもはや定番化したMPサウンドのバイラなサウンドの中に、思わぬ形で忍ばせていると答えてくれるようです。ルイス・ガルシア〜フランク・トーレス組の追撃を受けている今、この先どんなサウンドを聴かせてくれるか、不安でもあり楽しみです。

LUCKY 7 / ROBERTO ROENA Y SU APOLLO SOUND (INTERNATIONAL 907) 1976
LA 8va MARAVILLA / ROBERTO ROENA Y SU APOLLO SOUND (INTERNATIONAL 914) 1977
9 / ROBERTO ROENA Y SU APOLLO SOUND (INTERNATIONAL 924) 1977
EL PROGRESO / ROBERTO ROENA Y SU APOLLO SOUND (INTERNATIONAL 924) 1978

SALSA FEVER ORCHESTRA (JASON 004) 1980
GENTA DE PUEBLO / SALSA FEAVER(TH 2131) 1981
GUNDA MERCED Y SU SALSA FEAVER (TH 2179) 1982
YAIGO MAAS SALSA FEAVER (SONOTONE 1112) 1987
SALSA FEAVER (SONOTONE 1168) 1988

EL ORIGINAL Y UNICO… / WILLIE GONZAREZ (SONOTONE 1138) 1988
SIN COMPARACION / WILLIE GONZAREZ (SONOTONE 1174) 1988
OPUS ORQUESTA (SONOTONE 1159) 1988
DE CARA AL PIEBLO / CONJUNTO LATINO (SONOTONE 1160) 1988

MUSICAL PRODUCTIONS ALL STARS (MP 6077) 1992

SENSUAL / TITO ROJAS (MP 6035) 1990
TITO ROJAS (MP 6061) 1992
A MI ESTOLP / TITO ROJAS (MP 6109) 1993
ALGO NUEVO / ANTHOY CRUZ (MP 6039) 1990
PARA TI… / ANTHOY CRUZ (MP 6088) 1993
UN NUEVO HORIZONTE / TITO GOMEZ (MP 6053) 1991
AGRADECIMIENTOE / TITO GOMEZ (MP 6104) 1993
VINE PA’QUEDARME / PEDRO ARROYO Y SU ORQUESRA (MP 6020) 1989
TROPICO / PEDRO ARROYO (MP 6045) 1991
Y AHORA VOY YO..! / LUISITO CARRION (MP 6066) 1992

35 ANIVERSARIO “TRADICION CLASICA” / WILLIE ROSARIO (NRT 1005) 1993
PRIMI CRUZ / PRIMI CRUZ (NRT 1008) 1993
DE REGRESO / ORQUESTA MULENZE (NRT 1004) 1993


94/05/15 NiftyのフォーラムへUPした文章です。
その後残念ながらサルサ・フィーバーのCDは発売されることなく今に至っています。ウィリー・ロサリオのTH時代がCD化され入手しましたが盤起こしで針の音がチリチリ聞こえます。当時大人気のエディー・サンティアゴも同様ですので、サルサ・フィーバーはよくて盤起こしが精一杯かと思います。そんなワケで、私もLPからiTunesに変換してiPodでしみじみと聴いています。針が飛んでたりもしますが、LPでの柔らかで太い音が楽しめます。

それにしても、サルサ・フィーバーのあのサウンドは今聴いても息詰まるほどのプエルトリカン・ブルーノートに溢れています。そういえば、Niftyの書き込み(93年)に《Gente De Pueblo…プエルト・リコの哀愁に都会の香りがほのかにするサウンドに涙します。A-1のタイトルチューンでKO!まるでペドロ&カプリシャスの「別れの朝二人は〜・・・」とモロ同じメロディーの哀愁のカンタンテ!すでに私の瞳には南十字星が輝く・・さらに2曲目の Francisco で目がうるうる・・・・・まあなんと美しいことか。….プエルト・リカン・ブルーノート?の危うい音程に身震いした》とあり、これに《…私が、広島に勤務していた頃には、鳥取から浜田まで月1〜2回の山陰出張があり、いつも出発は朝の4時でした。次第に青みを帯びて行く空の下、一人で車を運転して行くのにぴったりでした…》とレスしていました。

今日もこれから、夜明け前に家の近所からリムジンで羽田へ行き、沖縄に出張です。リムジンの中で聴いてみたいと思います。

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