若尾文子映画祭③@角川シネマ有楽町 新婚日記 恥しい夢/嬉しい朝、新婚七つの楽しみ、新春狸御殿 60年代から始まるファム・ファタール前夜の姿も声も素敵すぎ

新婚日記 恥しい夢 1956.4 23
親の反対を押し切って結婚し上京した三郎(品川隆二)と千枝子(若尾文子)。新居は渡米した恩師の電話も電気冷蔵庫もある文化住宅。三郎がご近所に電話使用を融通したおかげでひっきりなしに電話取次ぎで落ち着かない毎日の千枝子はややノイローゼ。千枝子の先輩に強引に頼まれ寄宿舎から生徒を預かり、まったく二人っきりになれず悶々とした夜。すったもんだで最後は隣の二階に落ち着きやっと平和が訪れて…。

新婚日記 嬉しい朝 1956.5 23
無駄使いで夫婦喧嘩の三郎と千枝子。家計のために三郎は残業、千枝子は先輩の務める寄宿舎で炊事(栄養士の仕事はコネのある後任が来たためにクビ)。三郎の父(東野英治郎が好演)が急に上京し、二人が内緒にしていた残業と炊事の現場を発見し一度は激怒したが、「お前たちが仲よく隠しごとで助け合っているのが嬉しい」と喜び円満解決。

23歳の初々しい姿、笑ったりすねたり怒ったりと一喜一憂がキラキラ輝きまぶしい。ちょうど「赤線地帯」(溝口健二)以降「青空娘」(増村保造)前夜の姿もまた美しくかわいらしい。好みの声も健在だ。

新婚七つの楽しみ 1958.1 25
“理想の夫、理想の妻”という街頭録音で知りあった南川悠一(川崎敬三)と中山悠一(若尾文子)は新婚旅行の最中にエンコを助けた夫婦(島ひろし・ミス・ワカナ)に新婚には七つの楽しみがあると教えられ、それらを探しながら楽しんでいる。その夫婦が突然同じアパートに引越してからのドタバタ(実生活でも漫才を組んでいる島ひろし・ミス・ワカナのテンポがいい)、会社の先輩の大寺三平(船越英二)の無理な依頼から進展した先輩の結婚話も落ち着き、悠一と康子との仲も睦まじく…。

1958年(昭和33年)の銀座(マリオン周辺)が見られるのも楽しい。同じ新婚話でも3年後だと共稼ぎ(劇中では「ともがせぎ」と呼んでいる)夫婦のお互いの主張もあり会話も歯切れがよくスピーディー。デパートネクタイ売り場勤務のせいか若尾文子はメイク、ヘアスタイルも垢抜けて一段と都会的。娘役から女を感じさせる役への脱皮直前の美しさもまたドキドキするほど眩しい。出てくるだけで画面をさらってしまう変幻自在の船越英二の怪演にも目が離せない。

新春狸御殿 1959.12 26
狸の国カチカチ山の村娘お黒と狸御殿のきぬた姫を若尾文子が一人二役。眉毛とほくろを変えるなど凝っている。物語は大映らしく豪華絢爛ミュージカル。若君狸吉郎役は市川雷蔵でゴージャス。きぬた姫(実はお黒)とのラブシーンの舞も息が合い、扇子越しのキッスも見ている方がじれったく照れくさくなる。

今となってはややチープな感じもするが、マヒナスターズの艶やかさ、ダンシングチーム(SDKか?)とニップレス河童二人のお色気、化ける前の勝新太郎、リアクションへの音響(お腹をドドーン)、退屈になると突然新しい展開にも驚いてしまった。豪華で艶やかな着物と盛り付けられたティアラとキラキラネックレス、イヤリング。この高難度コーディネイト若尾文子の姿は見逃せない。

これら4作は評論の対象になりにくく評価されないことが多いが、60年代に入り「女経(第一話 耳を噛みたがる女)」(増村保造監督)から始まる若尾文子ファムファタール時代前の姿を一気に観ることができ、日本映画の最盛期にプログラムピクチャーの中で光り輝く姿を確認できたことがとても意義のある経験だった。

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