「快楽」音楽遊泳術2004

最近借りた本でおもしろかったのが『「快楽」都市遊泳術』。クラブ・シャングリラというエスクァイア・ジャパンに連載の文庫で、立川直樹と森永博志の対談集。最近再会した友人と、土曜日の午後に彼の事務所で四方山話をしていたことを、それ風にしてみると….

B:いや〜、久し振り。
M:というか、十数年も会えていなかったので、それに比べれば頻繁に会っていますよ。
B:まぁ、そうだね。
M:でも、ボリンケンさんの場合も僕も聴いている音楽って全く変わっていないので、逆にそれが再会後嬉しくて。ほら、周りの連中との音楽での接点がなくて、音楽の話が出来ないもどかしさがあって。
B:私の場合は、70年代の半ばに衝撃的な出会いをサルサでして、人生変わってしまったけど。まぁ、最近はラテンな出会いも少なくなったし、マサ達と再会した影響もありロック系も聴くようになっている。
M:ジェームス・テーラー、キャロル・キング 、ジョニ・ミッチェル、ローラ・ニーロあたりが基本ですネ、僕の場合は。

B:すれ違っていると思うけど、仙台の「ピーターパン 」の影響も大きいのでは?
M;ずいぶん色々教えてもらったような気がしますネ。
B:あそこで教えてもらったボニー・レイトの2枚目。あれは衝撃的だったな。そのアルバム以降スタジオミュージシャンとスタジオでアルバムを買うようになったワケ。ザ・バンドやボビー・チャールズとか。エイモス・ギャレットのギターって今でも最高のサウンドだよ。
M:マリア・マルダーですね。
B:マサのお陰でニール・ヤングのも再会できたし。
M:コンサート良かったですよ。
B:いけなくて今でも後悔しているよ。本人のサイトに『greendale』をモチーフにしたムービーがあるけど、それを観ていると、なんかアメリカ人ってホント世間知らずで無知なんではないかと思うね。
M:それは?
B:世界を動かしているのがやはりアメリカだよね、経済的にも。でも、その周辺の人たち全員が優秀なわけではなく、まぁほとんどが普通。センスも悪いし。でも、日本にいると全てが素晴らしく優秀に伝わるじゃない。しかもとんでもない事件って必ずや郊外で起きているし。
M:デビット・リンチの世界ですネ。
B:今度の新譜はこの辺の事も言いたかったのではないかと思うワケ

M:ところで、最近何聴いていますか?
B:ベテランのミュージシャンの動向って気になっている。
M:たとえば?
B:バリー・マンって知っている?
M:ティンパンアリーの時代ですネ。
B:当時は分業で音楽を作っているのが普通で、バリー・マンが作曲、奥さんのシンシアが作詞。ソウルの曲は実は白人が作っていたんだよね。その彼が、これまでの曲をピアノで弾き語りしているんだけど、これがソウルフルで味わい深い。
M:知っている曲ばかりだけど、本人が歌うとまたより深い情感がこもっていて素晴らしいですネ。
B:さっき話したけど、その辺の曲ってサルサに行っちゃった以降のできちんと聴いてなかったりするんで、例えばランディ・ニューマン やジョニ・ミッチェルの最新作って、自作の曲を集めているでしょ。今、その辺に興味があるネ。
M:ランディ・ニューマンの『Songbook Vol.1 』の1曲目のピアノの出だしを聴いただけでバーバンクって感じしませんか?
B:その空気感って大事だよネ。 ライ・クーダーやリトルフィートの1stって同じ雰囲気だね。ミュージシャンの本来の良さってその次のアルバムから発揮しているんだけど、妙にそれらの1stって好きなんだよ。
M:ジャクソン・ブラウンも似ていますね。
B:瑞々しい感じが良く出ている。でも個人的には同じ曲でもボニー・レイトのアレンジの方が好きだね。

M:今は音を全部埋めてしまうけど、この当時はすき間から何か漂ってくる感じがします。
B:機材も今と比べてたいしたことないし。でも、それはスペック的にたいしたことがないだけで、ウエスタンとかゴールドスターとかのスタヂオの特性もあるんしょ、きっと。丁寧なリイシューならその辺もカバーしてくれているので、CDで買い直しをすることが多い。
M:それじゃ新譜まで手が回りませんね。
B:いやホントそうだよ。また、おもしろいレコード屋がなくなったので、レコード屋巡りもしなくなったし。
M:吉祥寺なら、芽瑠璃堂、ジョージア、原宿ならメロディーハウス、青山ならパイドパイパーとか。もう、随分お金を使いましたから。
B:六本木のWAVEも良く行ったなぁ。あそこは意外とラテンも種類が多くて、嫌いな言葉だけどワールド系の担当者はHさんといって品揃えは良かった。でも、聞くところによると在庫回転率が下がると評価が下がる…なんてこともあったりして。まぁ、いやな話ですよ、まったく。最近は、HMVも在庫がスカスカになっているし余り行かなくなった。
M:僕は、仕事場に近いのでタワーですか、行くのは。ジャケットって意外とデザインのネタになりそうなのが多いし。昔はジャケ買いなんてのも。
B:ノーマン・シーフの写真ならOKとかね。ラテン=サルサなら逆にイナタイ方が良かったりして。
M:でも、ジャケットに書いてあることを舐めるように見てましたね。
B:ノートにメモしたりして。
M:昔からボリンケンさんはマメでしたからねぇ。

B:その色んなメモをドラッグして移動できるというのを知ったのがもう15年ぐらい前。それがMacとの出会い。
M:僕は仕事で使っていますがよく分からなくて、個人的に持っているのは去年買ったiBookです。
B:話せば長くなるけど、コマンドを入力しないと言うことを聞かないコンピュータ(MS-DOS)から、アイコンをドラッグ&ドロップするというのは革命的だったような気がするよ。今は、ベスト盤CDをMacで作っておまけにジャケットまで作れてしまうんだから、スゴイよネ。
M:iPodにもお世話になっているし。おそらく、お互いの再会がなければiBook もiPod も買わなかったと思います。
B:残りの人生、ちょっと大袈裟だけどね、その残った時間は物事を深化させていくことに使っていきたいと、最近思っているんだ。
M:なんとなく分かります。
B:そんな刺激を音楽やMacから受けているんだ。
M:音楽って大事ですよね。
B:ホントそう思うよ。
M:…そういえば、このソフトの使い方を教えて下さい。
B:Toast ね。これはCDが焼けると「チン」って音がするんだ、おかしいでしょ……。

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『「快楽」都市遊泳術 』は続編が出ていて、『続シャングリラの予言 』。その、序文に《バブル時代からデジタル化の時代…..実体のないものに人々が浮かれ、人々がモニター画面に幻想を見ているときも、僕たちはあちこちへ旅し…》友人と再会するまでの間の時代ってこうだったのかもしれない。そして、それが終わった頃に再会したことは、何か関係があるのではないかと感じ始めています。そして、ニール・ヤングの新譜『greendale 』から受けた刺激も、色々変わっていく事のヒントになりそうな予感がします。

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