ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド タランティーノ監督が肌で感じた選曲もまた素晴らしい

1969.8夏
初めは、お茶目なブラッド・ピット目当てで観始めたが、カーラジオや部屋で流している音楽がとても気になった。当時はウッドストックがありオルタモントがあったことからも遥かに遠い田舎町でかなりの時間差で同時の音楽を聴いていたため、それだけでは分からなかったことがこの映画で知ったような気がした。

時代考証をきちんとした空間に見合うような音楽をタランティーノ監督自ら選曲。ロマン・ポランスキーと彼の恋人シャロン・テートがパーティに向かう時に流れる「Hush」はディープ・パープルのデビューヒット。「彼女が今まで一番最高だ」と歌う時のアップが見ものだ(シャロン・テート役のマーゴット・ロビーがゴージャス)。

ポール・リヴィア&ザ・レイダーズは当時のアイドルグループ。アルバム『The Spirit Of ’67』のプロデューサーはテリー・メルチャー(ドリス・デイの長男でバーズのプロデューサー)。ロマン・ポランスキーとシャロン・テートが住んでいる家の前の住人はテリー・メルチャー(キャンディス・バーゲンと住んでいた)。チャールズ・マンソンはビーチボーイズのデニスにテリー・メルチャーを紹介されたがレコーディングの機会を得られず逆恨み、代わりにシャロン・テートが殺害された。

物語はこのシャロン・テート事件を軸に大きく動き始めるが、ラストのどんでん返しでのブラッド・ピットのかっこよさとディカプリオの火炎放射器には惚れてしまった。そのラストまで一気に畳み込む前に流れる「夢のカルフォルニア」のホセ・フェリシアーノのバージョンがパパス&ママスの屈託のない世界とは違い、夢が終わってしまったかのように沈むように響かせるセンスの良さにもハッとした。

慌ててSpotifyでサントラをDL。そして冷めないうちにiPad Proでもう一度観直し始めているところ。その多くはあまり知らない曲ばかり。こういった曲がラジオで楽しまれていたんだなぁ…と思いながら、随分昔に手にしていたライノのコンピレーション『Have A Nice Decade』を思い出していた。こちらは1970~1979までのヒット曲満載。知らない曲も少なく、豪華で克明なブックレットを眺めながら楽しめる。

合わせてプリファブ・スプラウトのパディ・マクアルーンが西部劇に憧れて「Jesse James Symphony」「Jesse James Bolero」(『Jordan: The Comeback』)を作ったり、アルバム『The Gunman and Other Stories』を作ったのも分かるような気がしてくる。

映画の話に戻るけど、スティーブ・マックィーンやブルース・リーまで出てくるし、クルマ好きにはキャデラック・ドゥビルに何かを感じるかもしれない。ファンならブラッド・ピットの立ち居ふるまいにキャッとなってしまうだろうな。

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