若尾文子映画祭②@角川シネマ有楽町 婚期、清作の妻

婚期 1961 28
清作の妻 1965 32
水木洋子の脚本が冴え渡る『婚期』
水木洋子といえば成瀬監督の『山の音』『浮草』『驟雨』が有名。ここでは、婚期を迎えた若尾文子と野添ひとみの姉妹の畳み込むようなマシンガントークが炸裂。それらをおっとり慌てて受け止める兄(船越英二)の嫁(京マチ子)、狂言回しの北林谷栄のセリフのおかしさ…と脚本の妙を堪能。

若尾文子のコメディエンヌとしての才能全開の爆笑コメディー。しかも、着物にメガネという高難易度コーディネイトも艶やか。メガネをかけない時には、目を細める細かい芸も披露、見どころ満載、姉妹が入浴前に若尾文子のボディーサイズをチェックするドキドキシーンやお見合いの仰天結果~家族会議など、もう何度観ても吹き出してしまう秀作。

一回だけ振り返り際に微笑む
若尾文子の傑作といえば『妻は告白する』を挙げる人も多いかと思うが、インタビュー集「宿命の女なれども」(2015)で本人は『清作の妻』が今では好きだと答えている。病気の父親のために囲われての生活、村に戻ってからの村八分。村一の模範青年清作(田村高廣)との恋。一人ぼっちだった自分にとって、かけがえのない愛を貫こうとする姿。

最愛の夫を再び戦地(日露戦争)に行かせないために取った行動の激しさ。口数が少なく、増村保造監督の独特のモノトーンの画風の中、若尾文子に光を注いでいる(本人もインタビューで指摘している)伊藤幸夫の照明が艷やかで素晴らしい。終始頑なな表情の中、たった一度だけ振り返り際に微笑むシーンも見逃せない

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