ラテンコーナー@御茶ノ水 ここで美意識と言ったら大げさだろうになりそうなラテンマナーとセンスを学ぶ

これほど強烈だったレコードショップはない
御茶ノ水聖橋を神田明神に向かう下り坂途中にある小さなビル。関係者以外使用禁止とあるトイレで緊張のため内緒で用事を済ませ、階段を登り恐る恐る扉を開ける。聞けてくるのは短波ラジオの競馬中継。短パンにランニング、黒縁メガネ、耳には赤ペン。レコード棚にはサルサのレコードがぎっしりとお客を待っている…ということは軽く裏切られ、棚内には数枚のレコードがあるだけ。全部見て回っても5分もかかららず、お互いに無言。それでも勇気をふるって1枚選び、

「これはどうでしょうか?」
「・・・・・・」

黙って茶封筒に入れられ、何故か手元からもう一枚茶封筒へ。そして、一言

「これも合わせて聴くように」

サルサの入り口にたどり着いたばかりの頃には、選ばれたアルバムの世界観がどうも分からず戸惑っていたのを昨日のことのように思い出す。中世時代の騎士道をモチーフにした一連のソノーラ・ポンセーニャ、サンフランシスコのクイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスのジャケットのようなロベルト・ロエーナ、脳みそから生えてきているウィリー・ロサリオ、虚ろな眼差しのエラジオ・ヒメネス。どんな奴らが演っているのも分からないジャケットに困惑。

しかも、サウンドは明朗でいっぽんどっこのようではなく、変則的な展開の応酬、ぶりぶりバリトン・サックス初体験、A面ボレロ/B面サルサ。華やかなサウンドがキラキラしているというよりも、どこか屈折してどんよりしながらつんのめっている。これらを次回訪問時に質問すると、意外にも親切丁寧にそのワケを教えてもうこともできたし、その後の嗜好を決めてしまったとしても忘れられないレコードショップだった。

4〜5年前によく通っていた「ラーメン大至」に行くときに撮った写真。はっきりとした記憶がないが、おそらくこのビルだと思う。人気もなく施錠してあったので階段を確認できなかったけど、ここに立つともう二度と会うこともない男の姿が蘇る

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