作家景山民夫について、そして忘れられない人

蘇る名作
小林信彦さんの週刊文春連載のコラムを読み返していると景山民夫についての記述があった。日付は98.2.19。景山民夫が亡くなったのが1998.1.27だから追悼文だったのだろう。80年代に入って日本冒険小説協会(内藤陳が設立)によって、様々な小説が紹介され勧められるままに読み漁った。冒険小説には厳密な定義はあるのだろうけど、男は男らしく生きる中にちょっとしたユーモアではにかんでいるところが私は好き。その中で、景山民夫の次の作品は当時とても印象的だったことを覚えている。

虎口からの脱出 1986.12
遠い海から来たCOO 1988.3

図書館から2冊借りて来て一気に読んでしまった。COOは絶滅したプレシオザウルスの子供を巡る海洋冒険小説。男の子の成長物語としてはロバート・パーカーの「初秋」を思わせる。ハードでタフなキャッシーの存在、銃の扱い、先鋭部隊に対する戦い方にも手に汗を握る。人間社会に対して絶望したはずのCOOが仲間を呼び寄せてのラストシーンの鮮明さが素晴らしい。一方、虎口は、アメリカ人、日本人、中国人女性が3日間、デューセンバーグで中国大陸を駆け巡る。ここでも銃の細かい描写に加えてクルマへのマニアックな描写が満載。万里長城の上を走るなんて荒唐無稽さも一気に読ませてしまい大興奮。

宗教に傾き、最後は不幸な亡くなり方をした景山民夫のことを思うと、やはり同原因で亡くなった自分より3歳上の先輩の事を思い出してしまう。背が高くて、言葉や動作が鮮明で目標=憧れに近かっただけにお葬式での顔がきれいすぎて、それが悲しすぎたことを今でも昨日のように覚えている。

どこかにしまい込んだままの、ディック・フランシス「興奮」、ギャビン・ライアル「深夜プラス1」、ロバート・B・パーカー 「初秋」、ジャック・ヒギンズ「鷲は舞い降りた」を探し出して読み返してみよう。