瞳をとじて ビクトル・エリセが40年ぶりに描くまなざしと閉じられる二人の瞳

探していた男
探された少女

ビクトル・エリセの新作が観られるなんて夢にも思わなかった。どのシーンも詩的で何かを探している。どれもが絵画のように美しく、好きな場面は二人が海を見ながら言葉もなく佇む静けさが素晴らしい。

姿を消した友人を探して、その親友は劇中劇(『別れのまなざし』=ボルヘスの短編集との関係もきになる)の中で娘を探すように依頼されている。親友の記憶を呼び戻すために未完の映画を古い映画館で上映。映画の中では見つけられた少女によって主人公が目を閉じられる。親友の記憶が戻ったようにも(そうでないかもしれない)思えるように、親友は瞳を閉じる。

エリセ自身が説明している《そうだった人生でなく、そうあるはずだった人生という物語。そして、記憶も未来も不確かな世界でさまようながら、今まさに起こっている物語》が円環的連鎖しながらのふたつの映画が終わろうとする。また、エリセ自身の未完の映画も投影されているのかもしれない。

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