SAYONARA AMERICA HARUOMI HOSONO 2019年のアメリカ公演の高揚感と幸福感を味わいながらそれぞれの孤独感と自由について考えさせられた

さよならアメリカ、さよならニッポン
どうもはっぴえんどという存在は自分にとっては好きなんがけどどこか踏み切れないそんな存在だった。歌詞の、〜なんです…とかの部分がどうも苦手だったのが正直な気持ち。高校時代仙台のピーターパンでラストアルバムが繰り返しかかっていて「さよならアメリカさよならニッポン」の奇妙なサウンドに惹かれてヴァン・ダイク・パークスの存在を知った。解散が決まりその記念にサンセットサウンドで録音した、その空気感はこれまでと違った風に感じたのを鮮明に思い出す。

細野さんは、はっぴえんど解散直後の『HOSONO HOUSE』『トロピカル・ダンディー』は夢中で聴いていたけどサルサに出会ってからは割と疎遠が続いた。2017. 12月、熱心な細野さんファンに誘われて横浜に「細野晴臣&ワールドシャイネス LIVE」を観てから、再びぐっと身近な存在になってきた。今回のライブはその流れをくんだアメリカ公演のドキュメンタリー。アルバム『あめりか』はLA公演を収録、映画はこれに加えて今年のコメント、公演の楽屋(ヴァン・ダイク・パークスやジョン・セバスチャンも登場)もコラージュされファンにとってもうれしい内容。

鉄壁のバック、特に高田漣と伊藤大地が素晴らしい。「ROOCHOO GUMBO」ではなんと「Dixie Chicken」のフレーズも盛り込まれて思わずニンマリ。やけにファンキーな「薔薇と野獣」「住所不定無職低収入」「Cho-Cho ガタコト・アメリカ編」のアンサンブルも見事だ。ライブ映像はやたらカットが多く落ち着かないが、カット割りが少なくじっくり観られるのも良かった。

自由が制限されて、全体主義に進んでいるのが怖い
並のドキュメンタリーにならなかったのは冒頭のどこかの屋上での映像にインサートされた細野さんのつぶやき=コメントがあるから。

突然現れたウイルス
このパンデミックは、世界的なオペラのように感じる
演出家は誰なんだろう
自由が制限されて、全体主義に進んでいるのが怖い
ウイルスも怖いけど、人間も怖いよね

アメリカへの感謝を記録したドキュメンタリーが今の時代にアップデイトされ、その意味でもロールエンドに流れる38年を経たセルフカバー『Sayonara America, Sayonara Nippon』の美しさに胸が打たれ涙してしまった。

おそらく30年以上ぶりのシネスイッチ銀座で。映画の後は煉瓦亭で元祖オムライスを食べながら観終わった映画についてあれこれお話するのも楽しみだったことを思い出す。普段はとにかく大きな画面と大音量の映画館で観ることが多いけど、このようなミニシアター(②で182席)でひっそりと観るの楽しみも大事にしないとネ。今思い出すとシネクイント渋谷(座席数162席)もやや見上げる席だった。その時は音は良かったけど画面が小さくやや見上げることに違和感を感じたけど、今思うとミニシアターならではだったのか…と納得。

■SAYONARA AMERICA
https://gaga.ne.jp/sayonara-america/

林立夫さんの自伝『東京バック・ビート族』は、特にキャラメル・ママ〜ティンパン辺りまでは個人的に興味深い話が満載。自伝の合間に対談が挿入されアクセントになっている構成。もしやと思い、久しぶりに手にしてみると伊藤大地さんとの対談を発見。ティンパン好きの父親が林立夫さんの事を教えたことやSAKEROCKのことなど。共にメロディ好きドラマーだったこと、ハネるようでハネないどこか割り切れないリズム感の話に思わずうなずいてしまった。細野さんのバンドでの伊藤大地さんは、ブラシとマレットを使っていて、ブラシで目一杯叩いていたのを観ているうちに、JTの「Fire and Rain」のラス・カンケルも思い出していた。
(2021.11.14 7:14追記)

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