ロニー・スペクター自伝 ビー・マイ・ベイビー スパニッシュハーレムに生まれた少女の生々しくも激動の人生にたどり着いたハッピーエンド

Whoa, Oh, Oh, Oh
誰もが憧れ夢中になった、ロニー(ヴェロニカ)のキュートな声と姿。ブライアンが擦り切れるまで聴きこんだ「Be My Baby」はトップを取るためにフィル・スペクターが練りに練りに練ったサウンド。イントロのドラム、カスタネットの連打、分厚いブラスやストリングスとコーラス、そして、コケティッシュな歌声。極め付けは、Whoa, Oh, Oh, Oh。妹のエステルがフィル・スペクターにダイレクトに連絡したのがきっかけで出会った二人はあっという間に恋に落ちてしまった。

シンガーにとって自分にあったプロデューサーがいるというのは、俳優にとって自分に合った監督がいるようなもの。いいプロデューサーは声の使い方や、それをレコードにとらえる方法を心得て、こちらのサウンドを引き立てる曲を選べるくらい頭が切れる必要がある。

スパニッシュハーレムで生まれ育った女の子がきらめく存在になって行く前半は、音楽が生まれる喜びに満ちていて読んでいてワクワク。しかし、そうした関係は長くは続かず、本書の大半は壮絶なフィル・スペクターとの結婚生活〜離婚に費やされて読んでいると気分が重くなってしまう。再デビューもおぼつかなく低迷して行く中で見つけた伴侶〜二児の出産でたどり着いたハッピーエンドが眩しい。

1990年に出版されたオリジナルに、その後の音楽生活や殿堂入り(2007年)、フィル・スペクターの訃報を追加したのが本書。残念ながら、発表を待たずに2022.1.12にガンのため自宅で亡くなった。ここ2週間は、1992年にリリースされた(オリジナルコピーマスターから作成)ベスト盤を聴きながら読んでいた。もう、こういうサウンドや声には出会うことはないと思うと、とてもさみしいけど、素晴らしい音楽がいつでもそばにいるってことは幸せなことなんだな、きっと。

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