The Song of Today #120 愛の終わりのサンバ / 長谷川きよし (1977)

祭り、人並み、踊り、叫び
サンバを聴き始めたのは75年以降だったと思う。日本盤が一気にリリースされ、ベッチ・カルヴァーニョ、マルティーノ・ダ・ヴィラ、オス・オリジナイスド・サンバ、カルトーラなどを知った。それまでカーニヴァルのサンバしか知らなかったが、サンバの奥行きのあるサウンドに身を任せているととても気持ち良く、少し前に完全にハマってしまったサルサとは違う世界観も好きになっていた。

長谷川きよしが、ライブハウスで「Sunday Samba Session」を演っていたことは今でも覚えていて、もしかして1回ぐらいは行ったかもしれないとか、もしかしてFMで聴いたかもしれないと今思う。今月に入って読んでいた『別れのサンバ 長谷川きよし 歌と人生』をきっかけとして、読みながら聴いているうちに出会ったのがこのアルバム。どこか硬質な印象がある長谷川きよしだが、ここでは名うてのミュージシャンの奏でるゆったりとしたリズムに乗った柔和な歌声が素晴らしい。長い時は3時間も続いたライブ。観たかったなぁ。

この曲は、76年にリリースされたベニート・ヂ・パウラの「Retalhos de Cetim」のカバ一で日本でもシングル盤が出ているので世界的にヒットしていたようで、歌詞違いで杉本エマやポールモリアもあったりもする。このアルバムでは曲前に、パーカッションが次々と紹介されるインストで気分も自然と盛り上げ、コール&レスポンスの短い練習後に曲が始まる。コーラスを追いかけるように長谷川きよしの繰り返し。一度聴いただけで自分もコーラスに参加できるようなメロディに魅了されてこの曲ばかり聴いてる。オリジナルはラテンポップス寄りだけども、こういう雰囲気も私好み。とかく根源的な音楽が重要とされがちだけど、この世界にも心惹かれてしまう。また、アルバムの流れもまるでそこにいるような臨場感も素晴らしいので、もっと音源がないかどうか気になっている。

昨年出版された本は、音楽を知った喜びから今日までの赤裸々な気持ちを包み隠さず描き、引き込まれて一気に読んでしまった。初めて知った椎名林檎との共演話など初めてのことばかり。今度は、ほかのアルバムも掘り下げながら、じっくりと読んでみようと思う。

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