じゃじゃ馬娘、ジョニ・ミッチェル伝 本人と関係者からのインタビューで浮き上がる世界観は、うわぁここまで言っていいの?と驚くことばかり

とかくサウンド面で捉えがちだった
ジョニ・ミッチェルは個人的にも長く聴き続けているミュージシャン。とかく、サウンド面で捉えがちだった。変則チューニング、ジャズミュージシャンとの交流に胸踊るばかりだった。特にリプリーズ〜アサイラム時代(1968-1980)はリアルタイムで聴いていていた。2015年に脳動脈瘤で倒れながらも、2020年からスタートしたアーカイブシリーズも充実していて少しずつ音楽〜アートの世界に戻ってきていると思っていたところに、突然ニュー・ポート・フォークフェスティバルで驚きの復活(2022.7.24)。サルサに人生を変えられてしまっても、常にジョニ・ミッチェルの歌は身近にあったように思える。

この評伝は2017年に発表された『Reckless Daughter : A Portrait of Joni Mitchell』の全訳。ジャケットでは黒人男に紛争するアルバム『Don Juan’s Reckless Daughter』からのタイトル。翻訳は丸山京子さん(『リトル・フィート物語』『恋する二人 ニック・ロウの人生と音楽』『スマイル』等音楽関係が多く読みやすい)。本人を中心とした数多くのインタビューと歌詞の解釈でジョニ・ミッチェル の世界観を浮かび上がらせている。引用された歌詞は訳者が新規に翻訳し、太文字で表記されていて分かりやすくなっている。カバーは原書の方が個人的に好きだけど、書店に並んだ際には地味に映るかもしれない。

離れ離れになった娘、ポリオや育ったカナダの荒野、ローレル・キャニオン〜ブリティッシュ・コロンビア州サンシャイン・コーストの家。グラハム・ナッシュ、レナード・コーエン、JT、ジョン・ゲラン、ジャコ・パストリアス、ウェイン・ショーター、ラリー・カールトンらとの出会いで目まぐるしく進化するサウンドやスタジオでの話がやはり興味深く、同じ場所に留まらず、商業的圧力に屈せず常に革新的存在であることがよく分かる。反面、コカイン、ディラン、ジャクソン・ブラウン、マイルスなどについては、うわぁここまで言っていいの?と驚くことも色々と。

訳者あとがきは、本書2017年以降現在まで短いながらうまくまとまっていて、毎年年末に届けられるアーカイブシリーズ(すでにVol.3)でインタビュアーを務めているキャメロン・クロウによる映画の話も進行中とうれしいニュースも紹介されている。