CYNTHIA ALIVE 南沙織 瑞々しい歌声が身近に蘇る

私は今 生きている
1971年といえば、ジェームズ・テイラー、ニール・ヤング、ザ・バンドあたりのシンガーソングライターに夢中になっていた頃。初めて南沙織に出会ったときの衝撃はとてつもなく大きく、長い髪、黒い瞳、白い歯などにすっかり魅了されてしまったことを昨日のことのように思い出す。曲はもちろん「17才」。リン・アンダーソンの69年の大ヒット曲「ローズ・ガーデン」によく似ているのはすぐ分かった。それでも、仙台に住んでいた私にとってはるかに遠い沖縄からやってきた南沙織の姿に、TVを見るたびにドキドキだった。あとで知った話だが、筒美京平さんに何か歌ってみてと言われて歌ったのが、この「ローズ・ガーデン」。それをイメージして作り上げたのが「17才」。酒井プロデューサーの意向で、本人の成長をなぞるような楽曲を、有馬三恵子(作者)筒美京平(作曲・編曲)で作り上げていた。

森高千里の17才
75年頃にサルサに衝撃的に出会い、これまで馴染んでいた音楽をほとんど聴かなくなっていた私に、もう一つの衝撃だったのが森高千里。ユーロビートに乗せて無表情にギクシャクしながら歌い踊り、ターンをしたら「M」の文字。いやぁ、もぉすっかりやられてしまい、追っかけを始めるは、始めたばかりのNiftyのパソコン通信をSE/30で寝る時間を惜しんでまで続けていたりしていたものだ。初めてのアイドルと呼ばれている南沙織。78年に南沙織が引退し自覚的なアイドルとしての森高千里が87年にデビュー。何か共通点があるのだろうか。

青い水を求め
酒井プロデューサーが著書『プロデューサー 音楽シーンを駆け抜けて』で《彼女は、当時、登場しつつあったシンガーソングライターの先駆けであった。もちろん、彼女が楽曲づくりをするわけではないが、彼女の持つ雰囲気、会話などから感じたものを、そのままコンセプトにする方法は、シンガーソングライターの発想と軌を一つにするものといえた》と(制作側として)語っている。そして、当時新進だった荒井由実、尾崎亜美、安井かずみ=加藤和彦、ジャニス・イアンの起用もこの辺りにあると思う。

南沙織の魅力を再発見するためにクリス松村が精魂込めて選曲したのが『CYNTHIA ALIVE』。CD6枚110曲、未発表写真満載、しかもクリス松村との対談。アイドルになりきれずに自然に生きようとしていた南沙織の姿が眩しすぎる。あえて時系列にしていないところにも魅力満載。ビブラートというよりもわずかな震え、「え」の発音が「ぃえ」に聴こえてしまう独自性、達者なバックミュージシャンが織りなすサウンドの新鮮さ。今でも色あせない世界が、ここ数ヶ月浸りっぱなしだ。

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