イーストウッド監督監督デビュー50周年40本目の『クライ・マッチョ』は、元ロデオスターで老カーボーイが傷ついた少年を助け出す素晴らしいロードムービー

新しい家を持つには遅すぎない
91歳にして監督監督デビュー50周年40本目の『クライ・マッチョ』には、これまでイーストウッドがテーマにしてきた、正義感、放浪、疑似家族、旅(戻れる旅、戻れない旅)が、いつものように押し付けがましくなく散りばめられている。全てを失いかけている元ロデオスターで老カーボーイ。昔の恩があり元雇い主の息子をメキシコから連れ出すことになってしまう。往復のメキシコの風景の空気感も素晴らしい。

はじめは気の合わない二人だったが、旅の途中でカンティナを営む女主人マルタに出会うところから、心の安らぎが二人に生まれる。そして、老カーボーイとマルタの心の通じ合いに繰り返し流れるのが「Sabe A Ti」。

この曲を知ったのはルイス・ミゲルの『Romances』(ロマンセシリーズ3枚目)。91年から始まったロマンセシリーズは朝昼晩飽きもせずに部屋に流れていた。オリジナルは59年でアルバロ・カリージョ作。数多いカバーの中から映画では、イーディー・ゴーメ&トリオ・ロス・パンチョスのバージョンが使われている。昔から、レキントギターが入るスタイルも大好きで、それは東京ロマンチカ好きまで続いている。

「俺の居場所は分かっているだろうな」と国境で少年に向かって老カーボーイが別れの言葉を投げかけた後に、彼が戻った場所で再びこの曲が流れ映画が静かな余韻を残して終わる。映画のテーマを決めた冒頭に流れる「Find a New Home」と合わせて見事な選曲だと思う。

途中、警官に呼び止められた危機、メキシコからの追手に襲われる危機に対しての伏線の置き方をみていると、いつもながらのイーストウッドの映画作りの旨さが際立っているように思えて唸ってしまった。

■クライ・マッチョ
https://wwws.warnerbros.co.jp/crymacho-movie/